ドラゴンボールを見ていると、一度くらいは思いませんか?
「重力室って現実に作れないの?」
部屋に入ってスイッチを押すと、
- 「重力10倍!」
そして、いつも通りトレーニング。
悟空たちはそんな感じで、地球とは比べものにならない重力の中で修行しています。
特に気になるのが重力100倍。
これ、現実の人間がやったらどうなるんでしょうか。
そもそも、重力を10倍や100倍にする機械なんて作れるのでしょうか。
気になったので、人工重力について調べてみました。
重力室ってそもそも何?
まず「重力室」という言葉について調べてみました。
現実に、ドラゴンボールのような「部屋の中の重力を10倍、20倍、100倍と自由に変更する装置」が存在するわけではないようです。
ドラゴンボールでは地球の重力を基準にして、
- 1G → 普通の地球
- 10G → 地球の10倍
- 20G → 地球の20倍
- 100G → 地球の100倍
という感じで重力を変更しています。
この「G」は重力加速度を表す単位として使われています。
では、仮に本当に10Gになったら、人間は普通に動けるのでしょうか。
調べてみると、どうやらそんなに簡単な話ではないみたいです。
重力を10倍にするとどうなる?
まず思いつくのが、
「体が10倍重くなるんじゃない?」
ということですよね。
イメージとしては近いのですが、実際にはそれだけではありません。
重力が強くなると、身体そのものだけでなく、身体の中を流れている血液にも大きな影響が出ます。
特に高いGがかかると、血液が身体の下側へ移動しやすくなり、脳へ十分な血液を送ることが難しくなる場合があります。
高G環境では視界が暗くなったり、意識を失ったりする「G-LOC(Gによる意識消失)」なども知られています。
つまり、
「重力を10倍にして筋トレすれば、10倍効率よく鍛えられる」という単純な話ではなさそうです。
筋肉を鍛える前に、身体のほかの部分が耐えられなくなる可能性があります。
重力100倍になるとどうなる?
では、ドラゴンボールでおなじみの100Gはどうでしょう。
これはかなり極端です。
地球上の重力を1Gとすると、100Gではその100倍の加速度になります。
たとえば体重60kgの人なら、
60kg × 100
と考えたくなりますが、実際の人体への影響を「6000kgになる」と単純化することはできません。
身体の各部分にかかる力や、血液の分布などが関係するためです。
ただ、ここまでGが大きくなると、少なくとも普通の人間が立って生活できるような環境ではなさそうです。
実際、高G環境では循環器系などに大きな負担がかかることが知られています。
なので、
「100Gの部屋で腕立て伏せ100回!」みたいなドラゴンボールの修行は、現実ではかなり無茶な設定みたいです。
実は「人工重力」はすでに作られている
ここからちょっと面白くなります。
「じゃあ人工的に重力を作ること自体が不可能なのか?」
と思って調べてみると、そういうわけではありませんでした。
実際には、人工重力を作る方法が研究されています。
代表的なのが、
「回転させる」
という方法です。
たとえば宇宙船や宇宙ステーションを回転させると、内部にいる人には外側へ押し付けられるような加速度が発生します。
この加速度を利用して、重力に似た環境を作るわけです。
NASAの資料でも、回転する構造物によって人工重力を作る方法が研究されています。
つまり、
「人工重力」という発想そのものは、SFだけの話ではないようです。

NASAは実際に人工重力を実験していた
さらに調べてみると、かなり昔から実験されていました。
1966年のNASAのGemini XI(ジェミニ11号)です。
Gemini XIでは、宇宙船とAgenaという機体を約30mのケーブルでつなぎ、2つを回転させました。
すると、遠心力によって約0.00015Gの人工重力が発生したそうです。
もちろん0.00015Gなので、ドラゴンボールの10Gや100Gとは比べものになりません。
それでも、
1966年の時点で「宇宙で人工重力を作る」という実験は実際に行われていたわけです。
しかもNASAによると、このとき発生した人工重力は非常に小さく、人間が感じるほどではなかったものの、宇宙船内で放したカメラが後方へ移動する程度の影響は確認できたそうです。
これはなかなか面白いですね。
回転させれば重力室を作れる?
ここまでくると、
「じゃあ部屋をグルグル回せば、重力室になるんじゃない?」
と思いますよね。
実際、考え方としてはかなり近いです。
人工重力を作る回転式システムでは、
加速度 = 回転速度² × 回転半径
という関係があります。
NASAの技術資料でも、人工重力を作るための回転速度や半径、そして人間が感じるコリオリ効果などが重要な設計要素として扱われています。
ただ、ここで問題が出てきます。
「人間が快適に使える回転式重力室を作ろうとすると、かなり大きくなってしまう」
という問題です。
なぜ巨大な施設が必要になるの?
たとえば小さな円盤を高速回転させると、強い加速度を作れます。
でも、人間がその中に入ると、
「グルグル回って気持ち悪い……」
となる可能性があります。
回転による人工重力では、コリオリ効果などによって人間の身体に違和感や乗り物酔いのような症状が生じることが研究されています。
そこで、
「じゃあ回転半径を大きくして、ゆっくり回せばいい」
という考え方が出てきます。
NASAの研究でも、人工重力を作るための回転構造物について、必要な半径や回転速度、人間への影響などが検討されています。
つまり、
快適な人工重力を作ろうとすると、「重力を強くする機械」より「巨大な回転施設」が必要になってくるというわけです。

ドラゴンボールの重力室は実現できる?
ここまで調べてみると、かなり答えが見えてきました。
まず、
人工重力を作ること自体は可能です。
実際にNASAは1966年に宇宙で人工重力の実験を行っていますし、現在も人工重力は宇宙飛行に関連する研究テーマになっています。
ただし、
「部屋に入ってボタンを押すだけで、部屋全体が10Gや100Gになる」
というドラゴンボール方式になると、話はかなり違います。
現在現実的に研究されている人工重力は、主に回転などによって重力に似た加速度を作る方法です。
なので、
ドラゴンボールの「重力100倍の部屋」は、現時点ではまだSFと考えたほうがよさそうです。少なくとも「あと数年で作れそう」というような技術ではなさそうです。
もし重力室ができたら何に使える?
ここは未来の話になりますが、もし重力をある程度自由に変えられる技術ができたら、かなり用途は広そうです。
スポーツ
高いG環境を利用したトレーニングができるようになるかもしれません。
実際、高G環境に身体を慣らすためのトレーニング研究は存在します。
ただし、これは「重力室に入れば筋肉が超強化される」という話ではありません。
あくまで高Gへの身体の適応を調べるものです。
宇宙開発
個人的には、こちらのほうが本命っぽいです。
宇宙空間の微小重力では、筋肉や骨など身体にさまざまな変化が起こります。
NASAでも、遠心機による人工重力が微小重力による身体への影響を抑える方法になるか研究されています。
将来の長期間宇宙ミッションでは、
「宇宙船の中に人工重力エリアを作る」
という考え方が重要になる可能性があります。
リハビリ
逆に、
「重力を弱くする」
という使い方も面白そうです。
普通の環境では身体への負担が大きい人でも、重力に近い負荷を調整できれば、運動やリハビリに利用できる可能性があります。
ただし、このあたりは将来技術の話なので、現時点で「重力室がリハビリに使える」と断定することはできません。
まとめ:重力室はまだSF。でも人工重力は現実に研究されている
今回調べてみて、個人的に一番面白かったのは、
「重力室は完全な妄想というわけでもなかった」
というところです。
ドラゴンボールのように、
- 「重力100倍!」
とボタン一つで部屋全体を100Gにする技術は、今のところありません。
一方で、
- 回転によって人工重力を作る
- 遠心力を利用する
- 宇宙船そのものを回転させる
- 人工重力を宇宙飛行に利用する
といった研究は、実際に行われています。
しかもNASAは1966年のGemini XIですでに宇宙空間で人工重力を発生させる実験をしていました。
なので現時点で一番近い答えは、
「ドラゴンボールの重力室はまだ無理。でも、人工重力という技術そのものは現実に存在している」ということになりそうです。
いつか本当に、
「今日は5Gでトレーニングするか」
なんて時代が来るのでしょうか。
そこまで行ったら、かなりドラゴンボールの世界に近づきますね。
……とはいえ、個人的にはまず1.1Gくらいから試したいです。
参考にした情報
- NASA「Sept. 14, 1966 – Gemini XI Artificial Gravity Experiment」
- NASA「Gemini XI」
- NASA Technical Reports Server「Development and Comparison of an Artificial Gravity Concept for Human Spaceflight」
- NASA Technical Reports Server「Physics of Artificial Gravity」
- NASA「One Small Step … Without Ever Leaving Bed」
- NASA「The Human Body in Space」
